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日本雇佣外国工人的调查报告(日文)

来源:出国劳务网 时间:2010-10-11 作者:出国劳务网 浏览量:

平成22 年10 月7 日(木)

独立行政法人労働政策研究 研修機構(理事長稲上毅)
国際研究部坂井澄雄
(電話)03-5903-6311 (URL)http:www.jil.go.jp/

アジア諸国における高度外国人材の就職意識と活用実態に関する調査(速報)調査結果のポイント

<調査の概要>

日本企業はアジア諸国の高度人材とその予備軍から就職先として選ばれる存在となっているのかとの観点から、中国(北京 大連)及びベトナムの有名大学 大学院の学生、シンガポール及び韓国で高度外国人材として働いている者を対象に聴き取り調査を実施。

<中国(北京 大連)、ベトナムの高度人材予備軍たる学生の「職業観」「就職観」>

  北京の有名大学 院の学生のほとんどは「専門を活かしたい」との職業観を持ちつつ、就職先は「雇用の安定」を重視して選択する堅実派が多かった。先進国に対する関心は高いものの、日本を含めた「外国にある外国企業」への就職は現実的なことと捉えられていない。

  日本語で機械工学を学ぶ大連の学生の場合には、日本企業に対する関心は高いものの、日本企業への就職は「経験を積む」「技術を習得する」機会と捉え、長く日本で働くことを念頭に置いていない者が多かった。

  ベトナムの有名大学の学生は、就職先について「賃金が高い」「専門知識を活かす」ことを理由にベトナム国内の日系を含む外資系企業を希望する割合は高いものの、外国における就職への関心は低かった。また、日本語を学ぶ学生については「経験を積む」目的で日本で就職することはあり得るが、長く勤めることはまで考えていなかった。

 

<高度人材としてシンガポール、韓国で働く外国人の意識>

  シンガポールで働く高度外国人材は、長く勤め、社会に根を下ろして暮らしている者が多かった。理由は、多民族社会、整備された企業の人事制度、英語の普及、住宅などの社会インフラが整っていることなどによる。ただ、高度外国人材の多くは近隣諸国出身の中国語を解する中国系の者が多い。

  韓国で働く高度外国人材は「韓国語の習得」が就職先、日常生活で求められ、「言葉の壁」に遭遇する割合が高く、現状では韓国企業に定着して長く勤務することを指向している者は少なかった。高度外国人材の多くは、韓国の大学院に留学し、修了後、「経験を積む」ために数年韓国企業で働き、帰国している。

 

1 調査の概要【調査の目的】

就労を目的として日本に入国、在留する外国人が増加している中で政府は、2007 年に高度外国人材の就業を促進するための施策を総合的に講ずることにした。しかし、我が国の高度人材に対する入国管理制度は、他の先進国と比べても開放的であるにも拘わらず、実際には企業における高度外国人材の受け入れは必ずしも大きく進展しているとは言い難い。本調査はこうした事情を踏まえて、日本企業はアジア諸国の高度人材とその予備軍から就職先として選ばれる存在となっているのかとの観点から、アジア諸国のなかで、比較的多くの高度人材を外国に送り出している国の高度人材予備軍、すなわち大学、大学院の学生、および高度人材を比較的多く外国から受け入れて活用している国で現に働いている高度外国人材にヒヤリングすることによって、日本企業において高度外国人材の活用を促進するための基礎データを収集することを目的に実施したものである。【調査の対象国 対象者と調査方法】

調査対象は、送出国が中国の大学生 大学院生、ベトナムの大学生、大学院生、受入国がシンガポールと韓国で就職して働いている高度外国人材を対象に個別ヒヤリングを実施。調査の時期は2010 年6 月中旬から7 月末。

中国(北京、大連)とベトナムにおいては将来の高度人材の予備軍である大学、大学院の学生を調査対象とした。学生の所属する大学、大学院は一般的な社会通念に従って「有名大学」を選んだ。すなわち、入学試験の難易度が高い大学である。他方、シンガポール、韓国については、それぞれの国の企業で働いているアジア各国出身の高度人材を調査対象とした。ここにおける高度人材の定義は「少なくとも大学卒である」ことを原則として、その他の条件はシンガポール、韓国の高度外国人材の就業許可、滞在許可に関する法律の規定に従った(高度人材の定義は別項)。調査対象者は下表のとおり。

中国 ベトナムの調査対象者(人)


【高度外国人材の定義】

本調査における高度外国人材の定義は下記のとおりとした。

  ①企業での職種:研究者やエンジニア等の専門職、海外進出を担当する営業職、法務 会計等の専門職、経営に関わる役員や管理職

  ②企業の人材層の中の位置づけ:現在既に経営に関わるなど高度な役割を果たしている外国人材および留学生など将来高度な役割を果たすことになるべき外国人材

  ③外国人材が所属する組織:当該国の国内組織のなかで働く外国人材、および主に当該国で海外ビジネスを行う国内組織のなかで働く外国人材

  ④教育レベル:原則、大卒以上

  ⑤在留資格:日本の法制度で定める「研究(企業内の研究者)」「技術(機械工学等の技術者、システムエンジニア等のエンジニア)」「人文知識 国際業務(企画、営業、経理などの事務職、企業内通訳、デザイナー等)」に当該国で該当する者。

 

2 調査結果の概要

(1)高度人材送出国【中国 北京】

北京における調査対象者は7 大学 大学院の学生16 人で、年齢は19 ~ 28 歳である。

大学に進学した経緯は、大半の学生が全国統一入学試験(高考)の成績で入学可能な最も水準の高い大学を選択したと回答している。ほぼ例外はなかった。学部 専攻の選択理由も全国統一入学試験の成績によると答えている。学生の回答には中国の受験戦争の厳しさがにじみ出ていた。これと比較して大学院進学の経緯は、入学試験に関する“苦労話”はなく、「さらに高度な知識を得たい」との動機がほとんどを占めていた。

卒業後の進路希望で「外国にある外国企業」と回答した学生は皆無であった。

調査対象者16 人のうち、7 人が国有企業を希望、国有企業と類似した組織である政府関係研究機関を希望している学生が2 人、公務員を第1 志望にあげた学生が1 人、外資系企業を第1志望とする学生が1 人、学部生で大学院進学希望者が1 人、外国への留学希望者が3 人であった。

卒業後の進路希望をとりまとめると、第1 に調査対象の学生の大多数が「大学、大学院で専攻した自分の専門を活かすことができる職に就きたい」と考えていた。この背景には、中国の高等教育は「実戦的」な面が重要視され、将来の職業と密接に結びついていることがうかがわれた。

第2 に、国有企業の人気が思った以上に高かったことが特徴である。国有企業への就職を希望する学生は異語同音に「雇用の安定」と「最近は賃金が高くなった」ことを理由としてあげていた。これに対し、民間企業、外資系企業は、国有企業と比べて「賃金は高い」が「雇用は不安定」であると考えられている。中国においても2008 年9 月のリーマン ショック以降の景気後退で雇用が不安定となり、とくに民間企業、外資系企業では雇用調整が大規模に実施されたことが、就職を考える学生に強く影響しているといってよさそうだ。

第3 にいえることは、北京の学生には「外国にある外国企業」に就職することは、現実的な問題としては捉えられていないことである。外国企業への就職を「まったく考えたことがない」「機会があれば考えてもいい」との回答がこのことを表している。ただ、留学希望者を含めて約半数の学生が「先進国」に強い関心を示し、「研修、勉強のために行きたい」との意欲を示していた。先進国の中では、アメリカが関心の的であった。調査対象者の回答ぶりからみて、これは中国の熱心な「英語教育」の結果ではないかと考えられる。北京の学生の大多数が英語能力の自己評価を「完璧」「ほぼ完璧」と答えていた。

つぎに、就職した企業に長く勤めるか、あるいは転職を視野に入れているかなどについて調査対象者の回答をみると、国有企業、公務員を希望している学生の回答は非常にシンプルで、「長く勤めるつもりである」と判で押したように答えていた。「雇用の安定」を重要視して就職する以上は、長く勤めようと考えることはごく自然な発想といえよう。外資系企業を希望している学生も、「働き始めてみないとどうなるか分からないが、現時点では自分の能力を十分に発揮したいと思っている」と控えめな回答で、「転職」は「仕事の内容次第である」と答え、「昇進」「賃金」は念頭にないようであった。いずれにせよ、北京の学生の将来展望は予想外に堅実な「安定指向」であった。

卒業後の進路希望に関する質問で「外国での就職を希望する者」が皆無であったことから、外国での就職に関する意見、感想を聞いた。この結果は、「全否定」2 人、「考えたことがない」10 人(うち2 人は「機会があれば考えてもいい」)、「機会があれば就職でも研修でも留学でもいいから先進国に行ってみたい」1 人、「外国で働くとすればアメリカ」2 人、「留学後、アメリカで就職するかもしれない」1 人であった。

調査対象者はいずれも「外国には1 度も行ったことがない」と答えており、こうした背景が回答に反映しているのかもしれない。いずれにせよ、日本を含めた「外国にある外国企業」に就職することには、現実感が乏しいとの答えであったといえる。

しかし一方で、留学、研修などは「自分の技術を向上させる」機会と捉え、ポジティブな意見が聞かれた。

ヒヤリングの中で説明を受けた北京の大学における「就職情報を入手する方法」には、①大学の就職担当事務室(掲示板)、②各学部、研究科の就職担当の教員、③指導教員、④学生会、研究生会などの学内組織、⑤同窓会、⑥キャンパス内のイントラネット、⑦民間企業、外資系企業の情報はインターネット、⑧知人、⑨企業が直接大学に来て募集、などがある。国有企業に関しては、国有企業に勤めている「知人」が最も有力な情報源であるという。

今回ヒヤリングした16 人のなかでは、「外国にある外国企業の募集」を実際に目にした者は1 人もいなかった。

【中国 大連】

大連におけるヒヤリング調査は、大連理工大学の機械学部、機械/日本語強化班の学生を対象に実施した。機械/日本語強化班は、日本語で機械工学を学ぶ極めてユニークな専攻である。2010 年には60 人の機械/日本語強化班所属の学生のうち80%は日本で就職するか、留学する予定である。このように日本および日本企業に関心の高い学生が多いことを想定してここをヒヤリング対象として選んだ。

調査対象者は3 年生15 人、4 年生8 人の計23 人で、機械/日本語強化班は5 年制であるため、4 年生も卒業までにまだ1 年残していた。調査対象者の属性は、男子学生20 人、女子学生3 人、地元大連出身者3 人、大連市以外の出身者20 人。大連の調査対象者は北京と異なり、同一大学の同一専攻で、属性から見た限り極めて同質性の高い学生グループである。

大連理工大学に入学した理由に関する回答は、北京の調査結果とほとんど同じ文脈で、「全国統一の大学入学試験を受け、その成績を勘案して、大連理工大学に入学した」との答えが圧倒的であった。なかには地方大学らしく「大連市で生まれ育ったので、子供の頃から大連理工大学に入りたいと思っていた。両親も常々、理工大学に入れればいいねといっていた」との回答もあったが、大勢は入学試験の成績に応じて入学したとの回答である。

機械学部の機械/日本語強化班を選択した理由も、やはり「機械学部の中でレベルが高い専攻であった」と入学試験の成績を考慮したとの回答が多かった。なかには機械と日本語の組み合わせは確かにユニークだが、ユニークなだけではなく「日本語だけよりは、機械をあわせて学んだ方が就職に有利であると考えた」との認識を複数の学生が持っていた。「就職に有利」との認識は、中国の日系企業ないし日本にある日本企業に就職するに際して有利であることを意味している。

調査対象者23 人の卒業後の進路希望を聞くと、「外国にある外国企業」をあげる者が9 人で、国有企業、外資系企業を大きく上回っていた。ここでいう「外国にある外国企業」とは実質的には「日本における日本企業」を意味していた。そこで進路希望を「日本での就職」と関連づけて整理すると、①日本における就職希望者9 人、②日本における就職の可能性を語った者7 人、③日本留学後に日本での就職を希望2 人、④中国の大学院修了後に「外国で働くかもしれない」者1 人、⑤「日本では就職しない」と答えた者2 人、⑥外国での就職についてまったく考えたことがない者2 人、となる。

日本における就職希望者9 人の日本で就職したい理由には「日本語で機械を勉強したからだ」など日本語を第1 にあげた者が多かった。この9 人の日本における就職先に関する希望は、全員が機械関係の企業であったが、特定の企業名をあげた学生はなく、大半が大企業を希望していたにとどまる。

ただ、多くの学生が、2 ~ 3 年から長くても10 年以内に日本での仕事を切りあげ、中国に帰国したいと考えていた。日本で「長く勤めたい」と答えたのはわずか1 人である。実際、先輩の例として「4 ~ 5 年で多くの者が中国に帰ってくる。中国に帰ったら北京や上海の日系企業に勤めている者が多い」と説明する学生がいた。

日本で長く勤めない理由を大雑把に分類すると、①日本で技術を向上させ、経験を積む、

②親孝行をする、③日本企業に対する不満、の3 点となる。

第1 の理由「技術を向上させ、経験を積む」が圧倒的に多い。日本留学希望者も「研究ではなく、実務的な勉強をしたい」と述べていた。要するに、日本における就職は、日本企業に長く勤め、日本に根を下ろして暮らす、という意味ではなく、 経験を積み」「技術を向上させる」機会と捉えられており、この文脈において、大連理工大学機械/日本語強化班の学生は日本への留学と日本における就職は同一次元で考えているといえそうだ。このためか、日本企業の賃金について質問したところ、「中国より高い」との答えはあったが、それほど関心はなさそうであった。

「日本企業に対する不満」は、大連理工大学におけるヒヤリングでは非常に例外的な回答であったといっていい。

【ベトナム】

ベトナムにおいてはハノイで調査を実施した。調査対象者は5 大学 大学院の学生14 人で、学部生12 人、大学院生2 人である。大学院生の数が北京と比較して少ない。これについて、ベトナムでは大学院生は働きながら夜間の修士課程に通う者が多く、全日制の修士課程、博士課程に所属する大学院生は研究者を目指す者がほとんどで、彼らは企業に就職することを考えていないとの説明があった。結果的にではあるが調査対象者に大学院生が多く含まれていないのは、ベトナムの現状を反映しているといえよう。

ハノイのほとんどの学生は、現在所属する大学に入学した理由を「入学試験の成績を考慮して」と回答した。学部、専攻についても入学試験の成績を考慮して選択したとの答えが大半であった。ヒヤリング対象となった学生が例外なく入学可能な点数を大学別のみならず、学部、専攻別に詳しく知っていた。この点も中国と同様に、各大学、学部、専攻のランキングが、政府(教育訓練省)が公表する資料で明確な形で示されている結果である。ベトナムの「受験戦争」も日本以上に厳しいとの印象を受けた。

卒業後の進路希望について14 人の回答をみると、「外国にある外国企業」との答えは皆無であった。

最も回答数が多かったのは「外資系企業」である。14 人のうち、7 人が外資系企業と答え、すでに外資系企業に勤めながら夜間の大学院に通っている学生を加えると8 人が外資系企業と答えたことになる。この8 人の専攻科目をみると、文科系が6 人、理科系が2 人。文科系6 人のうち、4 人は「外資系の銀行、証券などの金融機関」を希望、1 人は、外国語学部で日本語を専攻しており「日系企業に勤めたい」と回答、他の1 人は「アメリカ系の外資系企業に入社できればいい」と答えた。一方、理科系の2 人はいずれも工学部で、1 人は特定の企業名をあげ、他の1 人は夜間の大学院に通っている学生で、すでに外資系のメーカーに勤めていた。

外資系企業を選択した8 人に共通する選択理由は、「賃金が高い」「自分の専門が活かせる」の2 点である。他方で、「外資系は外国人の上司がいるので嫌だ」との声も聞かれた。

外資系企業のつぎに回答が多かったのは、国有企業の4 人。共通点は、4 人のいずれも工学部の学生で「雇用が安定している」ことを理由にあげたことである。残る2 人は「公務員希望」で「安定した職である」ことを希望理由としていた。「民間企業」については、第1 志望の外資系企業や国有企業に就職できなかった場合、「民間企業に就職せざるを得ない」との消極的な回答の中で言及されたに過ぎない。

以上の進路希望の背景には、賃金は外資系企業が最も高く、民間企業、国有企業、公務員の順で低くなる、一方「仕事の厳しさ」については、外資系企業が最も厳しく、民間企業がこれにつぎ、国有企業、公務員の仕事は相対的に「厳しくない」との共通認識があるようだ。また、雇用の安定について、国有企業、公務員は極めて「安定している」が、外資系企業や民間企業は「景気変動に影響されて不安定である」と考えられていた。民間企業が敬遠された理由は、国有企業のほとんどは大企業かつ独占企業であり、外資系企業も多くは大企業で、規模が小さくとも賃金は高いのに対し、民間企業は大半が中小企業で賃金が低いことであるようだ。

就職した企業に長く働くか、転職を考えるか、を聞いたところ、「安定した雇用を望む」ことを理由に国有企業への就職や公務員になることを希望していた者がいずれも、希望どおり就職できれば「長く働くつもりである」と答えていた。一方、外資系企業希望者は「3~ 5年で転職すると思う。実務経験があれば転職は容易であり、転職によって賃金が上がり、昇進できるといわれている」と考えているようであった。すなわち、安定指向で就職する者は国有企業、公務員を選択して、最初に就職した職場に長く勤め、高い賃金を希望して外資系企業に就職した者は、より高い賃金、昇進を求めて「転職」を視野に入れているという傾向があるといってよさそうだ。

なお、ヒヤリング対象者の中には「大学院への進学」「外国への留学」を具体的に検討しているケースはみられなかった。

なぜ「外国にある外国企業への就職」を希望しないのかとの質問に対しては「外国には1 度も行ったことがない」ので、「外国の企業に関する知識がない」というのが共通した反応であった。外国で働かない理由に、「ベトナムは今後、さらに発展することが期待できるのでベトナムで働く」という考え方もあった。こうしたなかで「チャンスがあれば留学はしたい」との声が幾つか聞かれた。

将来外国にある外国企業への就職機会があったらどうするか、との質問に対しては、「働くチャンスがあれば、行きたい」との積極派から、「外国で働くのも悪くはない」「検討するかもしれない」との中間派、「チャンスがあっても、たぶん外国の企業には入らない」との消極派までバラエティーがあった。働きに行きたい、と答えた積極派に具体的国名をあげてもらうと、日本、アメリカ、イギリス、シンガポール、中国の名前があがった。理由は、第1に「先進国」であること、第2に「言葉が通じる」こと、第3に「発展している国」であることだ。積極派の中でも「外国で働くにしても、長くは働かない。ベトナムに家族がいるからだ」との回答が複数みられた。また、中国でよく聞かれた「外国で働き、経験を積んで、出身国に帰り、その経験を活かしたい」との考え方も聞かれた。

就職情報の入手経路は、外資系企業希望者の場合は「インターネットの募集広告」との回答で、国有企業希望者の場合は「知人や国有企業勤務者の親類の者から募集情報を聞く」とのことであった。公務員の場合は毎年、12月に全国統一試験がある。

【送出国のまとめ】

ここでは北京、大連、ハノイの調査結果を比較検討する。

まず、共通点の第1は、現在所属する大学 大学院、学部 専攻を選択した理由が「全国統一入学試験の成績をみて」決めていることである。将来の職業、就職を考慮するよりは、「有名大学」に入学することが第1目標であったようだ。大学卒業、大学院修了まで2年以上を残す調査対象者の多くが「就職について考えたことがない」と答えていたことが何よりの証左である。この点について中国、ベトナムの国による差異はほとんど認められなかった。

第2の共通点は、就職を具体的に考える場合、「雇用の安定」を重視している学生が多かったことである。とくに北京とハノイの学生の大半は「国有企業」への就職を「雇用の安定」を理由として希望し、外資系企業、民間企業は「景気変動の影響により雇用が不安定」と考えていた。

第3の共通点は、多少のニュアンスの違いはあったが、北京、大連、ハノイの学生がともに「自分の専門性を活かした職業に就きたい」と答えていたことだ。「有名企業に入りたい」との回答はごく僅かであった。「大学は有名指向」であったが、「就職先は有名指向」ではなく、明らかに「専門性を活かすこと」を優先する意識が強かった。

第4の共通点は、「外国にある外国企業への就職」について、北京とハノイの学生は、現実的なものとして捉えていなかったことである。この背景には「1度も外国に行ったことがない」学生がほとんどで、身近に外国で就職した知人がいないといった事情が介在しているようだ。だが、北京とハノイの学生はともに先進国に対する関心は高く、外国に留学した先輩が身近にいることから、機会があれば留学してみたいとの希望は多くみられた。

これに対し、大連の調査対象者である機械/日本語強化班の学生は、日本語を学んでいること、日本の大学との交換留学制度があること、「先輩の多くが日本へ留学、就職で行っていること」などの環境から、日本で就職したい、日本に留学したいとの希望を大半の者が語っていた。

しかしながら、大連の学生も、日本で長く勤める考えはなく、2年から10年以内に中国に帰ってくると答えていた。調査対象者の「先輩」の多くは、日本で就職しても数年で帰国しているようだ。北京とハノイの学生は「もし外国で就職する機会があったらどうするか」との質問に対し、多くが検討すると答えたものの、経験を積んだあと、数年で帰国すると答えていた。この点では、大連の学生も、北京、ハノイの学生も同じ意識であるといえよう。これが第5の共通点である。

第6の共通点は、就職に際しての大都市指向である。北京の学生は、北京での就職を希望し、大連の学生は中国国内で就職するならば北京か、上海、大連を希望、ハノイの学生は一様にハノイで働きたいと語っていた。この理由として、中国もベトナムも、大学、大学院を卒業した学生にふさわしい専門的な職が「地方にはない」ことが強調されていた。

つぎに相違点をとりあげる。第1は、中国とベトナムの高等教育の違いである。制度自体は、全国統一入学試験に代表されるように類似点が多い。だが、ベトナムの大学は、校舎不足、教員不足などの要因で、全日制の課程も午前、午後の2部制が一般的で、また大学院への進学率が中国と比較してかなり低い。同規模の大学における大学院の学生数を中国と比較すると、ベトナムは5分の1ほどに過ぎない。すなわち、高度人材育成のインフラ整備には、中国とベトナムでは大きな差がみられた。

相違点の第2は、就職先を選択する際の理由である。すでに上でみたように、「専門性」を重視する点は共通していたが、ベトナムの学生は多くが専門性と同じ比重で「賃金が高い」ことを就職先を選ぶ基準にあげていた。中国の学生も賃金について言及しなかったわけではないが、ベトナムの学生は誰もが国有企業、外資系企業など企業形態の違いによる“賃金相場”について極めて豊富な知識を持っており、賃金に対する関心が中国の学生と比較して格段と高かった。

(2)高度人材受入国【シンガポール】

シンガポールの調査対象者は現在、シンガポールの企業で働いているアジア各国出身の高度人材である。高度人材の定義は「少なくとも大学卒である」ことを原則として、その他の条件はシンガポールの高度外国人材の就業許可、滞在許可に関する法律の規定に従った。

シンガポールは外国人のいわゆる「一般労働者(マニュアル ワーカー)」を100 万人以上受け入れているが、法制度上は「高度人材(ホワイトカラー)」を想定した制度とは明確に区分している。外国人マニュアル ワーカーの管理は非常に厳格であるのに対し、高度人材の管理は極めて緩やかである。

シンガポールで高度外国人材が働くためには、就業許可証として「エンプロイメント パス(E パス)」を取得する必要がある。取得条件は「月例賃金が2,500S$ (約16 万3,000 円)以上」で雇用されること、「専門職」「管理職」に就く者である。

ヒヤリング調査対象者は15 人で、出身国別にみると、マレーシア7 人、インドネシア5 人、フィリピン2 人、ニュージーランド1 人、男女比は男性5 人、女性10 人、学歴は大卒12 人、大学院修了者3 人、年齢は28 ~ 38 歳。「シンガポールで働く外国人の大多数は、アセアン諸国出身の中国系である」といわれるが、調査対象者15 人のなかに「中国系」が11 人含まれていた。

所属企業の業種は、製造業6 人、ロジスティック(運輸サービス)2 人、コンピュータ ソフトウェア開発2 人、IT 関連3 人、金融 保険業2 人。従業員規模は100 ~ 3,000 人。企業は合計13 社で、多国籍企業12 社、地元企業1 社。

ヒヤリング対象者の職務 職種は、大雑把に分類して各種の「エンジニア」が7 人、「管理系の職種」が8 人であった。「エンジニア」「管理系の職種」ともにマネジャー、アシスタント マネジャーなどの管理職が合わせて5 人いた。

15 人の調査対象者全員が、大学 大学院における専攻と現在の職種がほぼリンクしていた。外国人がシンガポールで職を得るためには「専門性」が極めて重要なファクターで、専門性を証明するために「大学 大学院の専攻」「過去の職歴(主として職務)」に関する書類の提出がE パス取得の必須条件となっていることから当然の結果であるといえよう。

調査対象者の月例賃金額は3,000 ~ 6,000S$ (約20 ~ 40 万円)である。日本の賃金との比較は難しいが、調査対象者の1 人は「日本の賃金水準より多少低い(10%程度)」と話していた。

企業で使う言語は、全員が「英語」と答えた。企業の公式の会議、打ち合わせはほとんど英語で行われ、書類もすべて英語で作成されているようだ。同僚などとの日常会話は、「英語」と「各種中国語」が用いられ、通常両言語の「ミックス」であるとの回答が多かった。「中国語を解さない」者は、日常会話を含めて英語のみで仕事をしているようだ。ただ昼食などはどうしても「中国語を話す者と話さない者」に別れがちだとの話を聞いた。

現在所属する企業に対する満足度は、「ほぼ満足」が多く、「可もなく不可もなし」が3 分の1、「不満」も1 人いた。この理由は、ほとんどが「現在の賃金に対する満足度」と解釈してよさそうであった。これに対して、職務に対する満足度は相対的に高く、「満足」「ほぼ満足」が合わせて14 人、残る1 人は「可もなく不可もなし」であった。この理由は、就

職に際して契約した職務どおりの仕事をしている結果であると考えられる。調査対象者がシンガポールで就職することに決めた理由、現在所属する企業に就職した理由はつぎの3 点に集約できる。

第1 の理由は、調査対象者15 人の出身地は4 カ国にわたっていたが、いずれの国よりも明らかにシンガポールの「賃金が高い」ことである。多かれ少なかれ、すべての調査対象者がこの点に触れていた。

第2 の理由は、言語である。シンガポールでは英語がビジネス言語であるのみならず、広く社会で使われている。英語は必ずしもアジアの共通言語ではないが、今日、アジアのほとんどの国において英語が第1外国語として学校教育で教えられている。ことの是非は別として、イギリスの植民地であったマレーシアやインド、アメリカの植民地であったフィリピンにおいては、旧植民地時代の影響で今日でも他の国と比較して英語が広く普及している。これらの国の高度人材にとってシンガポールはなじみやすい国となっている。

シンガポールでは英語と並んで中国語が広く使用されている。国民の75 %以上が「中国系」であることがその理由である。ビジネス言語は英語であるが、日常生活においては中国語の使用頻度の方が英語をはるかに上回っているといわれる。したがって、中国語を解するか否かによって、シンガポールで暮らす快適度に大きな差があるようだ。この点で、シンガポールは東南アジア各国の中国語を解する高度人材にとって魅力があるようだ。

第3 の理由は、シンガポール政府が、高度外国人材の受け入れに一貫して積極的なことである。シンガポールは100 万人を超える外国人マニュアル ワーカーを受け入れているが、この管理は極めて厳格で、不況時にはシンガポール人の雇用を優先してその数を減少させ、好況時には数を増加させている。これに対して、高度外国人材はほぼシンガポール人と同一視して処遇されている。

政府の政策に関連して、ヒヤリング対象者からつぎのような点が指摘された。

シンガポールで働く高度外国人材は、通常、E パスを得て働く。E パスは申請時の企業で働くことを前提とし、その企業を何らかの理由で離職すると、滞在許可を失う。この問題を解決するために、2 つの制度が用意されている。1 つは永住権(PR)である。E パスで一定期間働くと容易にPR が取得できる。PR を取得すると、シンガポール国内で転職が可能となり、精神的に安心感が得られる。PR を何らかの理由で取得しない者に対しては「個人E パス」が用意されている。個人E パスは、PR と同じく、E パスで一定期間働くと容易に取得できる。個人E パスを取得すると、離職しても半年間はシンガポールに滞在して求職活動ができる。この両制度は、有能な高度外国人材をシンガポールにとどめておくための有効な制度となっている。

さらに、シンガポールで働く高度外国人材の場合、一定期間勤めてPR を取得すれば、安価で快適な公共住宅(HDB フラット)に入居することが容易になり、子育てはメイド(外国人)を雇うことによって問題を解消している。メイドの賃金は、月450S$~ 700S$ (約3 ~ 5 万円)で、子育て中の調査対象者は無理のない負担であると話していた。

将来の計画については、主として現在所属している企業に今後も長く勤めるつもりか、あるいは転職を考えているのか、に焦点を当て質問したところ、①現在の企業に長く勤めるつもり3 人、②当面は勤めるつもり7 人、③シンガポールで転職するつもり2 人、④その他(留学を計画、10 年くらい勤めた後に出身国に帰国、昇進できなければシンガポールで転職)3 人、との回答であった。職場の上司への不満、昇進、賃金などを理由に「転職」することは、シンガポールで働く高度外国人材にとっては特別なことではないようだ。この背景には、シンガポールの高度人材の労働市場がこうした慣行になっているからであろう。すなわち、高度外国人材のみならず、シンガポール人高度人材にとっても「転職」は特別なことではない。

ただし、こうした考え方が一般的であるからといって、実際には「転職」がそれほど多いわけではない。シンガポール使用者連盟(SNEF )を訪ねた際にこの点を質問すると、「実際に企業を渡り歩いているのは“役員層”であって、ホワイトカラー層の転職は10% 程度である」との説明であった。

シンガポールにおける就職情報の入手方法は、①シンガポールで企業募集をみて4 人、②海外から人材あっせん会社に登録して情報入手3 人、③インターネットで情報入手3 人、④出身国で勤めていた企業のシンガポールの関連会社にスカウトされた2 人、⑤出身国の人材あっせん会社に登録して情報入手1 人、⑥現在の企業に勤めていた友人の紹介1人、⑦シンガポールに住んでいる親戚の紹介1 人、である。就職情報の入手方法は多様であるが、募集情報を入手するのに困ったと答えた調査対象者は1 人もいなかった。

【韓国】

韓国における調査は、韓国労働研究院(KLI)との共同調査として実施した。高度人材の定義は、「少なくとも大学卒である」ことを原則に、韓国の高度人材受入制度にそくして「教授(E-1)」「研究(E-3)」「技術指導(E-4)」「専門職業(E-5)」「特定活動(E-7)」の各ビザを取得して働いている外国人とした。

調査対象者は11 人で、出身国別にみると中国6 人、ベトナム5 人、男性7 人、女性4 人、年齢は26 ~ 43 歳。大学卒が5 人で、うち4 人が出身国の大学、1 人が韓国の大学を卒業。大学院修了は6 人で、全員が韓国の大学院を修了。すなわち、韓国への留学経験者が7 人含まれていたことになる。留学経験者の出身国別内訳は中国が6 人中5 人、ベトナムは5 人中2 人である。

韓国で高度人材として働く際のビザの種類は、「教授(E-1)」1 人、「研究(E-3)」1 人、「技術指導(E-4)」1 人、「特定活動(E-7)」8 人 ベトナム出身者は全員E-7 ビザで、中国出身者もE-7 ビザが3 人と多い。高度人材として韓国の企業で働く際のビザはE-7 が最も一般的で、今回の調査対象者もその例にもれない。

中国出身者は全員、中国語を母語とし、全員が韓国語を解すると答えた。なかには「中国国籍の朝鮮族」で「中国語より韓国語が得意」と答えた者が1 人、また中国の大学の「朝鮮語学科」を卒業した者が2 人いた。これに対しベトナム出身者は、留学経験のある2 人を除いて「韓国語が難しい」と答えており、まったく韓国語を解さない者も1 人いた。

既婚者は4 人、独身者7 人。既婚者の配偶者はいずれも出身国の者。既婚者のうち2 人は韓国で「単身赴任」生活をしていた。うち1 人は「家族を呼び寄せようとしたが、ビザを取るのが難しく」諦めたという。

現在の所属企業をビザの種類で分類すると、「教授(E-1)」の1 人は大学教員、「研究(E-3)」の1 人は政府関係研究機関、「技術指導(E-4)」の1 人は民間企業であるが製薬会社で薬品開発を指導、他の8 人は「特定活動(E-7)」で、うち7 人が民間企業、1 人が政府関係研究機関である。ベトナム出身者5 人のうち4 人はIT 関連 通信の業種で働いていた。中国出身の女性2 人は、中国語を活かした職務に就いていた。

賃金は税金、社会保険料を差し引いた手取額で100 ~ 250 万ウォン(約9 ~ 23 万円)と調査対象者によってその差が大きい。賃金について、中国出身者は6 人中2 人が「中国の約2 倍」と答え、4 人は「中国と同水準」と答えている。一方、ベトナム出身者は5 人中4 人が「ベトナムの約2 倍」と答え、1 人は「3 倍」と自分の賃金を評価していた。

企業や職務に対する満足度は「満足」「やや満足」が半数を超え、「不満」「やや不満」の回答はなかった。

韓国で就職した理由は「外国で仕事をする経験を積みたかったから」が11 人中7 人と最も多く、「経験」を就職理由にあげた回答者はいずれも、近い将来に出身国に帰ることを考えていた。就職理由に「賃金が高い」と答えた者は、ベトナム出身者3 人で予想外に少なかった。

就職理由ではこの他に「現在勤めている韓国の会社の社長が、自分が勤めていた中国の会社に要請し、当初は“派遣形式”で韓国の会社に勤務、現在は、韓国の会社に転職して仕事をしている」と、スカウトされた者が1 人いた。

現在所属する企業の職場をどのように考えているかを聞くと、複数の調査対象者が、出身国の労働慣行と韓国の慣行が異なることを認め、その上で「韓国人の同僚は勤勉である」「韓国人は几帳面に仕事をする」「企業では規則が厳格に守られる」「韓国人の同僚は責任感が強い」「よくあいさつをする」との好意的な感想を述べている。

しかし一方で、「勤務時間が長い」「退社時間が守られない」「上司より先に退勤するとよく思われない」との意見が聞かれた。「責任感」が強いので、仕事が終わらないと帰らない、したがって「退社時間が守られない」ことになるようである。この問題に対して「自分は上司に悪く思われても退社時間になったら帰る」という回答と、「できる限り韓国の慣行にあわせるよう努力している」との2 つの異なった対応がみられた。

韓国の職場で遭遇した問題点については、言葉、コミュニケーションにまつわる回答が多かった。とくに、韓国語のできないベトナムから来て就職した者は、業務そのものは英語で遂行しているが、同僚とのコミュニケーションに苦労しているようであった。韓国語が良くでき、韓国人の同僚とも問題なく業務をしている中国出身の女性も「会社に中国人アルバイトが5 人いる。食事をする時はいつも、中国人は中国人同士、韓国人は韓国人同士で別々に食べている」と回答していた。

過去の職歴を聞くと、現在の所属企業が初めての就職先である調査対象者が11 人中4 人いた。いずれも中国出身者で、韓国への留学経験者である。中国出身者で残る2 人は、中国で就職した経験を持っていた。ベトナムの5 人は、いずれも大学卒業後、就職している。うち2 人は韓国政府の奨学金を得て、韓国の大学院に留学、大学院を修了後に韓国で就職した。他の3 人は「賃金の高い」企業を求めて韓国の企業に転職していた。

「韓国で長く働き続けるつもりか」との質問に対しては、11 人中8 人が「長く仕事をしてくれと請われても、韓国で長く暮らす気はない」と否定的で、なかには「今年の9 月に契約が終了した後、ベトナムに帰る」など、すでに帰国のスケジュールのある回答者が2 人いた。他の3 人のうち1 人は「長くいてくれとの要請があれば、韓国に長くいることもあり得る」との曖昧な回答で、明確に「長く韓国で働きたい」と答えたのは2 人にとどまる。

「長く勤める気はない」理由は、就職理由の「韓国の企業で経験を積む」との回答と軌を一にするもので、韓国で経験を積んで出身国に帰り、より良い職を探すとの考え方である。中国出身者からは「両親がいるので、故郷に帰る」との回答も聞かれた。

「長く韓国で働きたい」と明確に答えたのは1 人(ベトナム出身、女性)に過ぎず、現在勤める会社の賃金が低いので転職するつもりだが、転職先は韓国の企業であるという。理由は「韓国が好きになった」ので「韓国で結婚して長く暮らしたい」と希望を述べていた。

質問の中で、「日本で働く気はないか」と聞いたところ、肯定的意見は少なく「興味がある」と答えた回答者が2 人いたのみである。大きなネックは「言葉」で、「日本語を今後勉強することは大きな負担になる」との意見が聞かれた。

【受入国のまとめ】

ここではシンガポールと韓国の調査結果を比較する。

第1 節で検討した中国、ベトナムの学生の外国にある外国企業への「就職観」などは、予想外に共通点が多くみられたが、高度外国人材を受け入れているシンガポールと韓国の調査結果を比較すると、共通点より相違点が際立って多い。そこで、両受入国の調査結果からみた相違点を中心に検討する。

まず、第1 に、受入制度の相違点をみる。シンガポールは1965 年にマレーシアから分離独立して以来、一貫して外国人労働者受入政策をとってきた。詳しい議論は避けるが、東南アジア諸国のなかで最も著しい経済発展を遂げる過程で、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピンなど近隣諸国の労働者を活用してきた。現在では労働力人口300 万人の30%に当たる100 万人以上の外国人労働者がシンガポールで働いている。この多くはマニュアル ワーカーである。シンガポール政府は景気変動に応じて数を調整するために外国人労働者を厳格な管理の下に置いている。

経済発展にとって必要な労働者はマニュアル ワーカーにとどまらず、ホワイト カラー層も重要である。シンガポール経済の構造は、金融と製造業が2 本の柱となっている。金融業においてとりわけ多くのホワイト カラー層が必要とされてきた。このホワイト カラー層もシンガポールは近隣諸国の高度外国人材を受け入れることによって不足する労働力を賄ってきた。ホワイト カラー層とは具体的には専門職と管理職である。産業構造が高度化するに従って専門職と管理職の需要は増加の一途をたどった。このため政府はマニュアル ワーカーとは大きく異なる受入制度を次第に定着させていった。現在では高度外国人材はE パスと呼称される就業許可書を取得すれば、多くの点においてシンガポール人高度人材とほぼ同一の処遇で就業することができる。E パス取得者の管理は極めて緩やかである。

一方、韓国の場合は1997 年のアジア通貨危機の直後に経済が大幅に落ち込み、ここから立ち直る過程で外資導入とあわせて外国人労働者の活用が本格的に政策課題となってきた。2003 年にはそれまでの研修制度を廃止し、外国人マニュアル ワーカーの導入に踏み切り、外国人の「雇用許可制度」を本格的に整備した。この制度は2 国間の政府合意に基づくもので、シンガポールの制度とは異なるが、外国人マニュアル ワーカーを厳格に管理する考え方は共通している。高度外国人材受入制度については2000 年代後半に入って整備が進み、現在の制度は2009 年3 月の出入国管理法施行令改正に基づく。

すなわち、シンガポールと韓国では高度外国人材受入れの歴史に大きな差があり、シンガポールではすでに社会に定着した外国人高度人材が多数みられるのに対し、韓国では定着は今後の課題となっている。シンガポールでは永住権(PR)や個人E パスによって外国人高度人材の国内における転職を容易にする制度が整備されているのに対し、韓国では「ビザを取得するのに限定条件がとても多い」と調査対象者の1 人が指摘したように、「国内で長く勤める」ための制度が整備途上であるといえよう。

賃金の違いも大きな要素である。シンガポールが受け入れる高度外国人材は制度上、E パスを取得しなければならない。E パス取得条件の第1 は「2,500S$ 以上」(約16 万3,000 円)の雇用契約を結ぶことである。すなわち、高度外国人材の実質的な最低賃金が政府によって設定されていることになる。「2,500S$ 以上」の賃金は、シンガポール人高度人材にとっての最低賃金といってもいい。シンガポールの調査対象者は出身国より「賃金が高い」ことがシンガポールで働く大きなインセンティブであることをほぼ全員が認めていた。

これに対し韓国で働く調査対象者の賃金は「税金、社会保険料を差し引いた手取額で「100 ~ 250 万ウォン」(約9 ~ 23 万円)と、企業により、あるいは個人によりその差が大きかった。調査対象者のなかには同じ職務に就いている「韓国人より賃金が低い」と考えている者もいた。また、韓国で働く中国人高度人材の調査対象者の何人は「韓国の賃金は中国と同水準」と話していた。ここにおいては「高賃金」というインセンティブはないようにみえる。他方、ベトナム出身の高度人材は「韓国の賃金はベトナムの2 倍」と評価していた。単純に比較することはできないが、シンガポールの調査対象者の賃金は3,000 ~ 6,000S$ (約20 ~ 40 万円)で、韓国の調査対象者をかなり上回っていた。

制度のみならず、社会の受け入れ態勢の違いも大きい。シンガポールは独立以前から移民によって成り立っている中国系を中心とした多民族社会である。近隣諸国の中国系を高度人材として受け入れ社会に統合していくことに大きな軋轢は少ない条件がもともと揃っていた。中国系のみならず、シンガポール国民には10% 近いインド系国民も存在する。多くはタミール語を母語とする南インド系のインド人である。当初はマレーシアのインド系高度人材がシンガポールに来た。最近ではインド本国からも職を求めてやってきている。中国本国からの受け入れは、政治的外交的理由から長く拒否していたが、1990 年に国交を結んだ後、慎重にではあるが中国からの受け入れも承認するようになっている。

シンガポールにおいては、近隣諸国の中国系の高度外国人材は、英語のみならず中国語を解する者が多い。企業における業務は英語が中心で、高度外国人材の英語能力は「完璧」に近いものがあり、かつ中国語を解することによって、中国系が大半を占める企業のシンガポール人同僚との「英語と中国語のミックス」による付き合いに支障をきたすことが少ない。同様に企業外の日常生活においても言葉の問題はないようだ。

これに対し、韓国においては、調査対象者の多くが、企業内で韓国語によるコミュニケーションに困難さを訴えており、日常生活においてはさらに困難さは大きいようだ。例外は韓国語が得意な「中国国籍の朝鮮族」に限られる。韓国における「中国国籍の朝鮮族」は、シンガポールにおける「中国系」と類似した状況であるといえよう。こうした社会の受け入れ態勢の違いが、高度外国人材が、シンガポールでは「働いて生活する」ことを前提にしているのに対し、韓国においては「数年、経験を積んで出身国に帰る」と考えている者が多い背景となっているようだ。シンガポールの調査対象者で「経験を積む」と答えた者はいない。

言葉の問題は、シンガポールでは企業に限らず社会全体が英語を第1 言語とし、中国語を第2 言語として社会生活が営まれているのに対し、韓国では企業においても社会全体においても韓国語が第1 言語で、英語は「第1 外国語に過ぎない」という事情にある。この違いは、高度外国人材が働き、生活していく上では決定的な違いとなっている。

シンガポール、韓国の社会の違いは言葉にとどまらず、「食事」にもみられた。シンガポールでは、企業で、あるいは日常生活で直面する問題に関する質問で「食事」に言及されることはなかった。しかし、韓国においては調査対象者の少なからざる者が「韓国料理が口に合わない」と答えている。

就職の経緯も大きく異なる。シンガポールでは、大学を出身国ないし外国で卒業した者が、「高賃金」を理由に就職している。これに対し韓国では、調査対象者の半数以上が韓国政府の奨学金などで留学した後、韓国内で就職している。

さて、シンガポールと韓国の共通点はなにか。調査結果から明確な共通点は見出し難いが、あえていえば、上記に述べたことと同趣旨であるが、政府の積極的な受入政策であろう。シンガポールは先に何度も指摘したように、独立以来一貫して高度外国人材受入に積極的だ。韓国の場合は、受入政策が策定されてそれほどの年月を経ていないため、まず政府が奨学金を支給して大学院への留学を促し、終了後、「特定活動(E-7)」ビザを支給することによって国内での就職の促進を図っているようだ。

第2 の共通点は、出身国との賃金格差と就職している高度外国人材の性格だ。シンガポールの場合は、理由は先に述べたとおり、近隣のシンガポールと比較して「賃金の低い」東南アジア諸国の中国系が中心である。韓国の場合も同様に近隣の韓国と比較して「賃金の低い」国である。ヒヤリング調査の対象者ではこの点は十分に確認できないが、韓国政府資料によると、E-7 ビザ取得者は中国出身者が圧倒的に多いようである。とはいえ、「国別にみた就業職種」では、中国出身者の70% 以上が「調理師長、調理師」である。

以上みたように、シンガポールの高度外国人材受入はほぼ定着し、シンガポールで働く高度外国人材は社会に溶け込み、長くシンガポールで就業している。この要因は、政府の積極的な受入政策と、英語がビジネス上の第1 言語であり、多民族社会であるというシンガポールの特異性に根ざしたものであるといえる。韓国の場合は、シンガポールとは大きく社会の条件が異なり、積極的受入政策を導入して日が浅いことから、現状では韓国で就職した高度外国人材は「経験を積むために数年働く」と考えている者が大半で、韓国企業に定着して働く者が増えるにはまだ時間がかかりそうであるといえよう。

(佚名)

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